ISPA Japan ヤングマリナープログラム
2018年オーストラリア・トールシップコース 報告(簡易版)
2018年12月6日
ISPA Japanでは、2018年8月にヤングマリナープログラムの一環として、オーストラリアでの第2回目となるトールシップコースをプログラム主催しました。(コース運営、管理はISPA公認スクールであるWindValley Sailing School及び現地トールシップセールトレーニングで多くの実績を持つSouth Passageに委託)
その概要を、その後行われましたコース参加者による駐日オーストラリア大使への「報告会」の模様と併せ、リポートします。
なお、このレポートは縮小版です。フルレポートについては(完全版)をご参照ください。
2018年ヤングマリナープログラム・オーストラリアトールシップコース
本年の同コースでは、ほぼ昨年と同様、オーストラリアはクイーンズランド州、タウンズビルを8月18日に出港し(South Passageに乗り込んだのは8月17日夕刻)、全8泊をほぼ同数のオーストラリアと日本の参加者が船内で共同生活をしながらセールトレーニングを受けます。
セールトレーニングに用いられたのは、South Passageという全長30.5mのスクーナーで、”To grow and develop young people through Adventure under Sail” という同団体のビジョンのもと、これまでにも多くの実績を上げているトールシップです。
この船に中学生から大学生まで、オーストラリアからの参加者9名、日本からの参加者は7名が乗り込みます。これにWindValley Sailing Schoolから派遣されたワッチ(グループ)リーダー候補3名が加わり、6名のチームが二つと7名のチームが一つの計三つのワッチグループに分かれて24時間体制で、クイーンズランド州のマッカイまでの航海に出ました。
三つのワッチグループではそれぞれSouth Passageのボランティアのワッチリーダーがグループメンバーの指揮・指導に当たりますが、その他にスタッフとしてはスキッパー、セーリングマスター、アシスタントセーリングマスター、専任のコックが、それに加え今年の航海ではISPA Japanからオブザーバーが2名乗り組みます。この体制で、マッカイまでの延べ256.4nmを走ることになります。
日本からの参加者にとって、先ず驚かされたことは、オーストラリア側参加者のほとんどがそれぞれのルーツをオーストラリア以外の国に持つ人たちである、ということではないでしょうか。オーストラリア現地の人たちと接することにより、オーストラリアなる国では、あるいは世界ではそれが当たり前のことかも知れませんが、そもそも色々な民族的、文化的バックグラウンドを持った人たちの集合体だ、という事実に改めて気づかされることになりました。
タウンズビルに停泊中のSouth Passageに乗り込む参加者たち
ワッチリーダーのファシリテーションのもと自己紹介が始まる
航海の模様は、参加者の体験記という形でいずれ雑誌などでも紹介されると思いますので、詳しい内容はそちらに譲りたいと思いますが、先ず初日は向かい風の中、カミングアバウトの連続です。スキッパーの考えをセーリングマスターがワッチリーダーに指示をしながらそれぞれのワッチグループのメンバーの作業を通して実行に移す、というスキムが、繰り返されるカミングアバウトの中で、だんだんと参加者にも浸透していったのではないでしょうか。
この後眼下に迫る真っ白な砂浜(White Heaven Beach)に駆け出し、それぞれの時間を楽しみました
日本とオーストラリアの参加者の交流も乗除に深まる中、出港後いよいよ日程も大洲目、Day 7には参加者たちが自分たちの中からスキッパー、セーリングマスター、ナビゲーター、ワッチリーダーを決め、彼らの指示に従って航海するコマンドデーが行われます。コマンドデーでは参加者たちに対して様々な課題が提供され、例えばルートや目標通過点・時刻についての指示が与えられます。
7年のプログラムではスキッパーとして日本からの参加者が選ばれましたが、2018年でもワッチリーダーの一人として日本人参加者が参加者全員による互選の結果選ばれました。
途中何人かのオーストラリアからの参加者と話をする中で、「日本からの参加者のconfidence levelが日に日に上がっていくよね」、というコメントを聞いて、またまたISPA Japanのオブザーバーとしては嬉しく感じた次第です。
8月25日最終日、昼前にマッカイの港に接岸し、フィッシュアンドチップを昼ごはんに、8日に及ぶ日豪合同のセールトレーニングが幕を閉じることになりましたが、マッカイでは地元のテレビのインタビュークルーが取材に訪れていて、オーストラリアにおけるISPA JapanとSouth Passageの異文化交流共同プログラムにも、多くの関心が寄せられていることを理解しました。
これで航海は終わりですが、日本人とオーストラリアの参加者の友情は始まったばかりです。現にこの写真の中から既に友人を連れて日本を訪れた参加者もいて、その際には日本人参加者が東京案内をするなど、交流が続いています。
(左)航海を終え、
記念撮影におさまる
プログラム参加メンバー
駐日オーストラリア大使に対するヤングマリナープログラム報告会
駐日オーストラリア大使、Mr. Richard Courtは、実は根っからのヨットマンです。その大使のご厚意に甘え、11/23には昨年と今年のオーストラリアでのヤングマリナープログラム参加者7名、ISPA JapanのパートナーであるSouth PassageのRussell Shaw氏、同じく日本で被災地の参加者たちに勉強する機会を確保すべく活躍しておられる認定NPO「カタリバ」から三箇山氏にご同席をいただき、ISPA Japanからは理事長のBob Sendoh、友眞を含めて総勢11名で「ヤングマリナープログラム報告会」と称し、大使公邸にRichard Court氏をお訪ねしました。
参加者の話に聞き入る駐日オーストラリア大使(右から二人目)
駐日オーストラリア大使を囲んでの記念撮影
参加者たちは、参加者全員が大使に語り掛ける形で、いかにオーストラリアの参加者、スタッフたちが我々を寛容に受け入れ、指導してくれたか、オーストラリアの自然やセーリングの環境が素晴らしいものであったか、また、8泊の船内での生活で、どれだけ毎回の食事が楽しみであったかなど、自らの経験をもとに全員で話をしました。
それに対して大使からは、ご自身がヨットでどのような体験をしてきたかをお話になり、また、特に「カタリバ」からの参加者の出身地、熊本にご自身が夫人とともに視察された経験もお話になり、ヤングマリナープログラムの意義と実績について、深く共感していただいたと感じています。
会の最後に大使は次のようなメッセージを参加者に送られました。
▶ 第二次世界大戦の折、オーストラリア、Darwinは日本からの攻撃を受けました。
▶ しかしながら、時代とともにその経験を乗り越え、先週、阿部首相がDarwinを訪れ、オーストラリアの首相Scott Morrisonと会いました。私もそこに同席をしましたが、これは戦争当時の関係を修復し、現在の友好関係を築いてきた歴史の大きなマイルストーンとなりました。
▶ そして、これからその友好関係を更に発展させていくのは、このプログラムに参加した皆さんの責任です。皆さんの今後の努力に期待しています。
12月Sail Training International年次総会
Sail Training International (STI) https://sailtraininginternational.org/ はセールトレーニングを通じて若者の成長を促すのを目的とした非営利団体ですが、その年次総会がスペインはセビリアにて11/29-12/1、開催されました。
STIは1956年の帆船レースをきっかけに築かれた団体で、世界中の若者の相互理解と友好関係に貢献したということで2007年にはノーベル平和賞にもノミネートされた由緒ある団体です。今年のヤングマリナープログラム オーストラリア トールシップコースに参加した松下彩華さんが日本代表として参加、各国のユース代表と共にセールトレーニングを広めるための方法、それに必要な資産運用をどうするかなどの討論を行いました。またそれ以上にプログラムに参加したユース間の交流も深まり、今後各国のコミュニケーションも活発化していくのではないでしょうか。